大航海時代とルネサンス 大航海時代 ルネサンス 歴史 参考文献 index

使者の派遣「聖ドニ伝」より

サン・ドニ修道院長から国王フィリップ5世(在位1316〜22)に献じられた「聖ドニ伝」。オノレの延長線上にある作品だが、新しい工夫が見られる。
パリが舞台となるたびに画面下部にセーヌ川と橋が描かれ、パリの生活の諸相を思わせる働く人や遊ぶ人が見られる。画像の対象の幅が広がったことを示している。
川、城門、邸宅と各部分は並行に手前から奥へ積み重ねられ、それぞれが異なる背景で閉じられている。これによって奥行きをもつ絵画空間が作られている。建築枠で囲まれた空間のなかを平行な層に分け、それぞれの区画のなかに人物が置かれている。この後、イタリアからの奥行き表現が受け入れられていく。
パリのほかローマ、アテネ、アルルなどの都市にもそれぞれ特徴のある建物があてられていて舞台となっている都市が見分けられる。聖ドニの姿も年齢を重ねるに従い変化している。
この場面。パリでのドニの布教に対抗するため、異教の祭司たちが援軍を求めてローマに使者を派遣する。上部画面右側に手紙を受け取る使者と出発しようとしている使者。二人の使者で物語の展開や時間の経過を表している。

世界美術大全集10 ゴシック2 1300・10年代

使者の派遣
イヴ作「聖ドニ伝」より
1317年頃 写本装飾 25.0×15.5cm
フランス パリ 国立図書館